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高校教員が38年目の現場にFCIを選んだワケ【教員 平内秀樹インタビュー】

こんにちは、FC今治高校 里山校(通称:FCI)の公式note編集チームです。

今回の記事では、FCIの教員で現在は立ち上げ準備室 副室長として学校づくりを担う平内 秀樹さんにお話を伺いました。

キャリアのスタートから定年まで、中学・高校教員として勤めあげたという平内先生。これまで教育現場で長年子どもたちと向き合ってきた平内先生が、新しい教育を志したワケは一体何だったのでしょうか?

平内 秀樹(ひらうち・ひでき)さん

1962年、兵庫県神戸市生まれ。大阪教育大学卒業後、兵庫県の公立高校に6年間勤務。その後、私立の中高一貫校に30年勤務。2022年に定年退職後、県内の私立高校に1年間勤務し共学化を支援。その後、2023年10月よりFCIに参画し、現在は立ち上げ準備室の副室長。担当教科は数学。

家庭科と保健体育も、大切な教科。教育者として抱いた葛藤

ー平内先生のこれまでの経歴を教えてください。

これまで教員として、37年間キャリアを積んできました。はじめは兵庫県の公立高校に6年間勤めたんですが、私立の中高一貫校で教員募集があると声をかけられたのをきっかけに転職。定年まで30年間勤めました。

そこは兵庫県三田市にある三田学園中学校・高等学校という100年を超える伝統校で、文武両道を実践する素晴らしい学校でした。生徒たちは自然豊かなキャンパスでのびのびと過ごしながら、部活動も勉強も一生懸命やるっていう子が多かったですね。

ただ教師として、伝統校ゆえの難しさも感じていたんです。

例えば、大学受験でいえば「国公立に何人合格」というのがどうしても学校の大きな目標になってくるわけです。勉強に夢中になることは素晴らしいことだし、勉強が悪いというわけでは決してない。でも、受験だけが目的になっている勉強はどうなんだろうとも思うわけです。

正直に言えば、自分自身を振り返っても受験勉強がどれだけ社会の中で役に立ってるか、歯切れのいい答えは見つかりません。教師ですらそう思っているのであれば、同じように疑問を抱いている大人は少なくないんじゃないでしょうか。

特に中高生の大事な時期に必死になって受験勉強をやって、中にはそれで潰れてしまう子もいる。「これでいいんだろうか、ちょっと違うんじゃないか」教師生活が長くなるにつれてそんな気持ちが大きくなってきました。

ー学校が何を大切にするべきか、葛藤を感じていたんですね。

学校教育を受けて大人になった今だからこそ「税金や社会のいろんな仕組みのことを知らないな」と思うこともあります。今でこそ金融リテラシーに関する授業があったりしますが、私たちの頃はそういうこともなかった。

私は家庭科と保健体育も、実は大切な教科だと思うんです。でも受験勉強にはほぼ、関係ないですよね。そうなるとどうしても力を入れて学ぶ意識が起こりにくいわけです。

そうしたモヤモヤを抱きながら、学校改革にもチャレンジしてきました。教員の有志のチームでアクティブラーニング研究会を作って、どういう授業のやり方が効果的なのかを議論したり、探究学習も他校より早いタイミングで取り入れました。

ICT教育もかなり早くから導入して生徒全員がiPadを持っていたので、コロナ禍でもオンライン授業で休校を避けられたということもありましたね。

そうやっていろんな教育を学んだり、外国の教育を勉強したりするなかで、「新しい学校づくりというのは絶対必要だ」という思いはとても強くなっていったんです。

実際の探究学習では、自然豊かな学校の環境を生かしてSDGsをテーマに活動したり、三田市の活性化を考えたりと、社会と繋がるテーマ設定をしながら力を入れていきました。

探究活動を通して社会で生きていくために必要な知識や実践力を身に着けていってほしい。そう思っていたんですが、やはり受験勉強は受験勉強、探究は探究というところがどうしてもあって。

探究学習での学びを生かして総合型選抜で大学進学する生徒も若干名はいましたけど、大多数にとって探究は単なる授業の一つ。それどころか、結局は受験勉強がベースだと、探究学習が負担になってしまっている現実すらありました。真面目な生徒ほど何でも一生懸命やるので、板挟みになって生徒が一番しんどい思いをしてるということに気が付いたんです。

社会で役に立つ知識を得ることは重要だけど、探究学習を真ん中には置けない葛藤「本当に大切にすべきことを学べる学校を創りたい」と思っていた矢先に出会ったのがFCIでした。

FCIがカリキュラムの中心に置く探究学習。社会の中で実践しながら必要な力を身に着ける

FCIは、生きるための本質を学べる学校

ーFCIについて知ったきっかけは何だったのでしょうか?

三田学園時代にすずかん先生に講演に来ていただいたことがあり、それ以来SNSでも繋がりを持っていたんです。ある時、すずかん先生が「FCIを創る」ということを発信されて「自分が理想とする学校像にかなり近い学校やな」とビビっときました

特に「体験から学ぶ」そして「主体性を育む」というところには強く共感しています。失敗を含めてチャレンジできる環境を社会の中に用意し、そこで思う存分体験を積ませるということは、これまでの教育ではできなかった新しい試みだと思います。

野外体験など、体験から学ぶ授業が多いのがFCIの特長

そうした学校の覚悟を表しているのがリバネスさんと作り上げた理念ですが、これはすごいと思いますね。

命をつなぐために、生きることの本質を問い、実践する

普通、学校が掲げる理念というと『教育理念』なんですね。『教育理念』という視点で見ると、この言葉は何か違和感がすごくあったんです。

でも「生徒にこんな教育をしてやろう」じゃなくて、学校自体がそういう理念なんだと。FCI自体が、命をつなぐために生きることの本質を問い続けて実践していく学校なんだと。教員自身もそれを考えながらやっていかないといけない。学校の在り様を示しているんだと思うと、すごく腹落ちしたんです。

自分も一緒に「生きることの本質は何か。そのための学びは何か」を考えて実践していきたいと思っています。

多様性は、当たり前。そんな学校にしたい

ー平内先生はFCIでは数学を担当されると聞いています。学習進度の差が生まれやすい数学の授業ですが、FCIではどのように進めていく予定でしょうか?

数学は全員に同じように教えても、絶対に落ちこぼれが出てくるし、できる子にとっては退屈な授業になってしまいます。そうさせないためにと、教員同士で意見交換しながら個別最適な学習環境をいかにして創るかを考えているところです。

授業では始めに「どういうことを学ぶのか」や「どうして必要なのか」に触れ、目的意識を持てるよう目線合わせをします。

その後の知識習得にあたっては全体で講義するのではなく、映像教材を使いながら各自で学習する環境を整える予定です。早く理解できる子はさっと進めばいいし、ゆっくりじっくりやりたい子は何回も見ながらやればいい。

さらにその先は各自で、応用演習に進むのか、基礎を繰り返しわかるまでやっていくのか、AI教材を使いながらそれぞれのペースで進めていきます。

ただすべてが個別学習というわけではありません。一つの問題についてみんなで解答を考えてもらう協働学習も取り入れながら、学びあう仕組みを作っていきたいと思っています。

例えば「4人グループ全員が一つの問題に対して解き方を説明できるように理解してください」とお題を出します。できる子はわからない子に教えることで理解が深まりますし、わからない子は一方的な先生の話を聞くより飲み込みやすかったりする。理解度が違う人同士で学びあうことが、それぞれの学びになるんです

先生という立場は、あくまでもサポート。学ぶというのは先生に教わることだけではありません。大事なことは『学び方を学ぶこと』。

友達の真似をしてみる、自分なりにやり方をアレンジしてみる、そんな学び方のバリエーションを経験することで、将来自分一人で学べるようになることが大事だと思うんですね。

個別学習と協働学習で、目的意識をもって授業に取り組む

ーそういう意味では、多様な生徒たちが混ざり合って取り組むことが、まさに「学び」になるんですね。

今の高校は凸凹がないですよね。全部、偏差値で分けられて一見効率が良さそうだけど、本当の学びにはならないというのはよく言われてます。

社会に出たら同じような人ばっかり集まっている場所なんてないし「多様性」ってすごく特別そうな感じですけど、当たり前なんです。

逆にいうと、これだけ多様性やダイバーシティがなんか叫ばれている中で、学校では学力ごとに区別されているのが”許されてる”というのは違和感すら覚えます。

学校教育は百年以上も前に一つのシステムとして作られたものです。同じ年代の子を集めて教えて、大量生産に向けた人材を作っていく。そういう時代は良かったけど、これからの世の中はそうではありません。

新しい学び方が求められているし、いろんな学び方があって、良いと思っています。

FCI一期生も、全国各地から多様な仲間たちが集う

ーまさにこれからの時代の学びを切り拓いていくFCIですが、いよいよ開校間近です。「こういう学校にしていきたい」という意気込みを最後に聞かせてください。

生徒も教師も、毎日来るのが楽しくなるような学校でありたいなと思います。

これまで長く教師をやってきましたが、思い返してみれば、行くのが楽しい年は生徒との信頼関係がしっかり築けていた年だったなと思うんです。生徒のことを縛るのではなく、信じて待つ。信じて任せる。FCIはそういうことができる学校にしていきたいですね。

今、校則をどうするかについても議論が始まっていますが、学校生活を送るためのルールなので生徒たち自身が責任を持って決めていってほしいと思っています。

FCIは生徒ファースト。私も教員として、生徒たちをサポートしたいと思います。


■3月に1期生募集最後の入試を実施します

FCIでは新しい高校へ飛び込みたい、挑戦したいと思ってくださる生徒との出会いを期待し、3月にも入試を実施します。将来のさまざまな選択肢を模索している生徒の皆さんが、存分に悩み考え、ぜひ納得のいく決断をしてくれることを祈っています!

■個別相談、LINEでのご相談もOK!

FCIでは皆さまからの不安や疑問にお答えするため、個別相談会やLINEでの質問も受け付けています。気になった方はお気軽にお問い合わせください。


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